IARS異常症発症牛の成育状況とIARS遺伝子異常の保因状況の調査

平成28年度島根県獣医学会

IARS異常症発症牛の成育状況とIARS遺伝子異常の保因状況の調査

○原知也、山本哲也、長崎雄太、嶋田浩紀、足立全、岸本昌也、加藤大介

発表者所属:(株)益田大動物診療所

 

1. はじめに: イソロイシルtRNA合成酵素(以下IARS)異常症は、虚弱子牛症候群を引き起こしている原因の一つとされている遺伝性疾患である。今回、繁殖肥育一貫牧場におけるIARS異常症発症牛の成育状況及び、2農場においてIARS遺伝子異常の保因状況の調査を行ったので、以下その概要を報告する。

2. 方法: ①IARS異常症発症牛の発生率を求めた。IARS異常症発症牛は、IARS異常遺伝子保因の種雄牛の交配により生産された子牛全頭を採血し、動物遺伝研究所及び家畜改良事業団に検査を依頼し、診断を行った。②IARS異常症発症牛の出生体重、出荷体重、疾病発生状況及び枝肉成績を正常牛と比較した。③2農場において繁殖和牛におけるIARS遺伝子異常の保因率を求めた。

3. 結果: ①2013年1月~2014年12月の2年間で出生頭数1583頭に対して10頭発生が認められた。発生率は0.63%であった。②IARS異常症発症牛の出生体重は雄27.7㎏(n=5)雌30.8㎏(n=5)、対して正常牛は雄37.1㎏(n=798)雌35.1㎏(n=775)であった。IARS異常症発症牛の出荷体重は去勢638㎏(n=4)雌460㎏(n=1)、対して正常牛は去勢811㎏(n=115)雌710㎏(n=92)であった。IARS異常症発症牛の呼吸器・消化器疾患の平均治療回数は66.3回(n=8)、対して正常牛は21.3回(n=40)であった。IARS異常症発症牛の枝肉等級は去勢3.0(n=4)雌2.0(n=1)、対して正常牛は去勢4.3(n=115)雌4.2(n=92)であった。IARS異常症発症牛の枝肉重量は去勢383 ㎏(n=4)雌271㎏(n=1)、対して正常牛は去勢528㎏(n=115)雌471㎏(n=92)であった。③繁殖和牛におけるIARS遺伝子異常の保因率は2農場で延べ14.9%(正常牛831保因牛146)であった。

4. 考察:IARS異常症発症牛は出生から出荷まで正常牛と比較して発育が悪く、易感染性であった。IARS異常症は計画的交配によって防除することが可能であり、今回の牧場において2014年6月以後の発生は認められていない。公表されている種雄牛の保因状況及び、交配する雌牛の保因状況の把握が重要である。

IARS異常症発症牛の成育状況とIARS遺伝子異常の保因状況の調査(発表ファイル)

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