性腺の内分泌学的及び性染色体検査により雌性仮性半陰陽と生前診断した交雑種牛

平成29年度島根県獣医学会

性腺の内分泌学的及び性染色体検査により雌性仮性半陰陽と生前診断した交雑種牛
○加藤圭介、山本哲也、原知也、嶋田浩紀、足立全、岸本昌也、加藤大介
発表者所属: (株)益田大動物診療所 

1.はじめに:仮性半陰陽とは外部生殖器や第2次性徴が示す性とは反対の性腺を持つものをいう。雌性仮性半陰陽は外見上の特徴は雄に似るが卵巣をもち、雄性仮性半陰陽はその逆をいう。国内において雄性仮性半陰陽の症例は報告がみられるが、生前において雌性仮性半陰陽と診断した報告はない。今回交雑種牛において、性腺の内分泌機能や性染色体を評価し、雌性仮性半陰陽と診断した症例について報告する。
2.症例:交雑種で出生後、外部生殖器が雄様であったため雄と判断された。去勢時において、陰嚢は存在するが精巣が触知できず、潜在精巣が疑われた。月齢の経過とともに包皮口が本来の位置よりも尾側に位置していることや包皮の先端が雌の外陰部様を呈しているといった所見がみられた。
3.検査:hCG負荷試験を行った。血中テストステロン(T)濃度、エストラジオール(E₂)濃度およびプロゲステロン(P₄)濃度をhCGの投与日、5日目、7日目に測定した。また抗ミューラー管ホルモン(AMH)濃度を測定した。さらに、毛根を用いて性染色体の検出を行った。本症例がもつ生殖器を同定するために、超音波画像診断装置を用いて、経直腸下にて生殖器の探査を行った。
4.結果:hCG負荷試験により血中T濃度は有意な上昇が認められなかったが、血中E₂濃度およびP₄濃度は有意に上昇した。また、AMHは検出された。毛根部による性染色体の検索においては、Y染色体は検出されなかった。超音波画像診断装置による探査においては、膀胱から尿道の直上に子宮および卵巣様構造物が認められた。
5.考察:E₂およびP₄濃度の上昇と超音波画像より、卵巣の存在が認められた。また血中T濃度が上昇しなかったことから機能的な精巣の存在は認められなかった。機能的な精巣が存在しないならば、検出されたAMHは卵巣の顆粒膜細胞から放出されていると考えられる。また毛根部よりY染色体が得られなかったことより、遺伝子の表現型はXXであると考えられる。以上の結果と外貌所見より、本症例を生前において雌性仮性半陰陽と診断し、今後の肥育牛としての継続的な飼養に影響がないことが示唆された。

 

性腺の内分泌学的及び性染色体検査により雌性仮性半陰陽と生前診断した交雑種牛

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