乳房全摘出術
症例:3か月後に分娩予定を控えたホルスタイン種
左前分房より腐敗した乳腺組織や血液および乳汁を含む黒色の液体の排出を認めました。
罹患分房のみではなく乳房全域に腫脹を認め、感染が波及していると判断しました。
妊娠していることも考慮し、乳房の全摘出を行いました。
手術:①キシラジンによる鎮静(横臥位)、乳房全体に広く浸潤麻酔
②広い範囲を剃毛し、消毒
③乳房を円周状に切皮し、結合織を丁寧に剥離していく。
④太い血管は結紮しながら剥離を進める。
⑤乳房後方に会陰動静脈、中央部に外陰部動静脈が見られたら必ず結紮する。
⑥前方の腹皮下動静脈も必ず結紮する。(結構見えずづらかったです)
⑦正中提靭帯に達したら腹壁近くで切離し、摘出する。
⑧摘出部位を洗浄、深層から連続縫合にて閉鎖
術後経過:元気、食欲ともに良好であったが、胎子が流産したため、廃用に供しました。
考察:摘出は非常に出血が伴うため、止血と結紮を常に行えるように心がけました。
今回のように乳腺が感染、壊死により泌乳ができない状態であり、かつ妊娠がわかっている場合においてはこういった乳房の摘出は有効だと感じました。1部の分房が感染、壊死した場合は罹患分房切除も考慮する必要があると思います。