眼球摘出術
症例:後頭部をスタンチョンに擦り、擦過傷となり、擦過部位から細菌感染を起こしたことで血行性に左眼球に感染し、排膿を認めたホルスタイン種成乳牛
術前経過:抗生剤による全身投与と、擦過部位および左眼球の洗浄を行いましたが、状態の改善を認めなかったので眼球切除を行うことにしました。
手術:①キシラジンによる鎮静(横臥位)と眼瞼周囲の浸潤麻酔
②眼瞼周囲の剃毛と洗浄
③眼瞼角を切開し、鉗子でけん引しながら皮膚と結膜の接合部から、円周状に切開
④眼窩縁に向かって結合織を剥離していく
⑤視神経と眼血管が見えたら、絹糸にて結紮しますが、今回は血管内が壊死し、血餅
が詰まっていいたため、結紮せずに分離しました。
⑥眼窩を洗浄し、眼瞼を皮内埋没縫合にて閉鎖しました
術後経過:切開創から、排膿が認められましたのでアクリノールによる眼窩と擦過部位の洗浄、抗生物質の全身投与を行いました。術後1週間で排膿は認められなくなりました。
考察:今回のような二次感染に伴う眼球の壊死および排膿は、眼球を切除し洗浄することで良好な転機をとることが示唆されました。感染した眼球は放置するといずれは脱落すると思われますが、感染が波及するに従い、全身性の感染症になりうる可能性があるため、摘出し、きれいに洗浄することが望ましいと思われます。
経過写真