牛の飲水量が少なくなる冬の季節は尿石症の季節とも言えます。ヒトは自覚がある場合、積極的に利尿効果のある飲食物を摂ったりしますが、牛はそういうわけにはいきません。
「オレ、結石持ちだから多く水飲まなきゃ」とかって考えないですからね。
飲水をお湯に変えたり、舐剤を置いたりしてして、飲水量が増えるように仕向けてやります。しかし、こうした努力も空しく、尿石症は発生します。陰毛に石が付くだけなら、別にいいですけど、最悪の場合、尿道に石が詰まり、外科的処置が必要となります。発見が遅ければ、死に至ります。
先日(2/5)も松永牧場分場の5ヶ月齢の育成牛で発生しました。
完全尿閉で排尿停止です。
早速、手術の準備です。
ここで通常なら、肛門の下に尿道瘻(尿の出口)を造ってやり、そこから排尿させるのですが、今回は牛も若齢であるのと、やはり肛門直下に尿道瘻を形成すると、糞などで汚染され易く、膀胱炎や腎炎に至ることがあるので、ペニスを切開し、直接尿石を取り除く術式を選択しました。
陰嚢から肛門に向かって約15cm切開します。牛のペニスはS字状に屈曲しており、この部分に大体結石が詰まっています。皮膚切開後、程なくS字状に屈曲したペニスが現れ、尿閉の原因になっている結石が触知されました。そこにメスをあて、ペニスを縦軸に2cm程度切開し、結石を取り除きました。
次に、切開した部分を慎重に縫合します。縫合の際、少しでも手元がぶれると、縫合針を刺しいれた部分が、縦軸に裂け、そこから尿が漏れてしまいますからね。
皮膚も縫合し、術式完了。
次の発生を危惧しながら、暖かい春を待ちます。
冬場の疾病の代表 “尿石症”
2009.02.09|カテゴリー:診療日誌