酪農経営のロス要因として、主に乳房炎、肢蹄疾患、繁殖障害が挙げられます。栄養管理や環境を整備しても、個体要因も絡み、完璧に駆逐することは難しいです。
なかでも、乳房炎は原因菌の追究と共に、対応をアレンジしなければならず、抗生剤の感受性試験を行っても、必ずしも臨床の現場に反映されず、治療日数がいたずらに過ぎてしまい、出荷できないケースが多々あります。
そこで我々は臨床的対応に平行して、かねてより松永分場で虚弱仔牛のロタウィルス防除に成果のある“ヒト型インターフェロン製剤”である「ビムロン」を製造元のバイオベット社の提供を受け、2009年1/22より乳房炎罹患牛に投与してみることにしました。「ビムロン」は生体の白血球の貪食能を上げ、免疫力を強化するものです。
投与量は1頭1gで症状がなくなるまで投与しました。
メイプル牧場診療担当の足立Vetから「治療日数が減少しているようだ。」との報告を受け、ビムロン投与群(39頭)と未投与群(178頭)の治療日数を比較してみることにしました。
明らかな治療日数の短縮がみられます。(今回は短報ということで統計学有意差はご容赦、ご容赦……。)投与1回あたりのコストは700円程度かかりますが、治療日数が短縮されると以下の有益な点が挙げられます。
・休薬期間の短縮
・薬品代の軽減
・別搾り、治療の煩雑さからの開放
・治療日数が短縮されるため、乳腺組織のダメージが軽減
・抗生剤の積極的使用がなくなるため耐性菌の出現の抑制
乳房炎軟膏や抗生剤って結構高いですよね。「ビムロン」は休薬期間はありません。何と言っても乳を捨てなくてもいいってのが嬉しいですね。
最早、乳房炎治療に手放せないアイテムの一つとなりました。
乳牛は潜在性アシドーシス、潜在性ケトーシス等により免疫力が低下していることが予想されます。産褥熱や子宮内膜炎への効果が期待されます。
乳房炎治療にいい報告があります。
2009.03.27|カテゴリー:診療日誌