8月中旬の冷涼な空気の残る爽やかな朝の5:30。足立Vetからの着信。
「双仔で出ませんわ」
「了解」
このやりとりで、メイプル牧場で八方手を尽くしたが、娩出されないので、手術の用意をしてきてくれと云うのを理解しなければなりません。
現場に到着してみると、母牛の陰門から覗く胎仔の肢は蹄底が上を向いておりそれほど大きくありません。「これで出ないのか?」よく見ると3本目の肢も覗いており、それも上を向いており双仔であるのが窺い知れます。「2頭共、逆仔なんて珍しいな」と思いつつ、準備をします。
素早く剃毛、消毒、局所麻酔を済ませ、術式開始です。
開腹し、妊娠子宮を創外にできるだけ出します。腹腔の中で切開、胎仔を取り出すとなると、腹腔が汚染され、後々腹膜炎に悩ませられる事になりますからね。が、しかし腹腔に手を差し入れ、妊娠子宮を持ち上げようとしますが、びくともしません。腹腔の殆どが子宮で占められているような感じです。
何とか、子宮の先端を10cm程度創外に出し、切開します。
程なく胎仔の頭部、前肢が見えました。チェーンを掛け3人で牽引します。これもまたびくともしません。童話の「大きなかぶ」を思わせます。子宮の切開創を広げ、何度かチャレンジします。
そして何とか娩出し、出てきた胎仔を見てビックリ\(◎o◎)/!
何と、2重体です。双仔の胸結合体でした。
これじゃ~通常娩出されるわけありません。
益田家畜保健衛生所にて病性鑑定してもらいました。肢は8本、頭部・消化器は2セットでしたが、循環器は共有してました。
画像をアップしましたが、処理してあります。WEBは世界中に繋がり、老若男女すべてのヒトが目にするかもしれません。配慮しました。
人間の分娩と違って、術前診断などしません。現場で順次判断対応しなければなりません。術中、何か先天異常とは思いましたが、2重体だったとはなぁ~。ふぅ~。
夏の想い出……。『双仔難産激闘編』
2009.09.08|カテゴリー:診療日誌