この夏から、メイプル牧場も3産目の経産牛の分娩が始まりました。乳牛は産歴が進むと、様々な代謝性疾患への罹患のリスクが高まります。なかでも、分娩・泌乳開始で急激なCa動員により血中Caが低下し、いわゆる腰抜け、起立不能に陥り、最悪心不全で死亡することもある乳熱は、乳牛の生産病の代表的なものでしょう。
そこでメイプル牧場も、経口Ca剤のチョイスを含めた、乳熱予防のプログラムが必要となりました。牧場の飼養形態にあったものを構築していきます。当然、飼料中のイオンバランス(DCAD)はクリアしています。
日本全薬工業株式会社からカルチャージの提供を受け、カルチャージ投与群と従来使っていたグルコン酸Ca投与群を設け、試験しました。各Ca剤を分娩前、分娩後、分娩1日後と投与し、同時に採血を実施しCa値の推移を比較してみました。
結果を見てみましょう。
先ず、Ca剤投与前に血中濃度が7.5mg/dl以上だったグループは生理的範囲であるためか、一時的な僅かな低下の他、両群とも推移に主だった変化は見られません。
異常のない個体を追っても仕方がないので次に、投与前7.5mg/dl未満だったグループ、つまり低Ca血症に陥った牛群の推移です。カルチャージ投与群が上昇傾向があるようです。グルコン酸Ca投与群は弱冠低下傾向があるようです。(統計学的有意差はありませんが。)
つまり、低Ca血症の状態において、上皮小体ホルモン(PTH)の活性の下、吸収性の優れた塩化Caを含んだカルチャージ投与により、泌乳によるCa動員対し、即効性に腸管においてCaが吸収され、Caの血中濃度が低下しなかったと思われます。又、比較的吸収スピードの緩やかなプロピオン酸Caにより、その後の血中Ca濃度が維持されたと思われます。
他の経口Ca剤と比べるとコスト的どうかなと思われるかもしれませんが、1本1000円程度で、牛が起立不能になり、廃用や死亡したりすることを思えば、全然安いですよ。
乳熱予防のプログラムとしてカルチャージの分娩時の1回投与、分娩後のドレンチングにグルコン酸Caを使用します。
これから寒くなり乳熱の発生し易い季節となります。この試験を通して、予防への道標を得た我々はこのプログラムで対抗していきます。
これがいいかも……。カルチャージ編
2009.10.03|カテゴリー:診療日誌