去る8月5日、島根県松江市のサンラポーむらくもにおいて、島根県獣医学会が開催されました。 我が診療所の足立Vetが、平成18年度島根県獣医学会にて、発表し、学会長賞を受賞した『大型繁殖農場におけるBVDV持続感染牛の摘発と清浄化対策』の続報として、 『大型繁殖農場におけるBVDV持続感染牛の摘発と清浄化対策(第2報)』 と題して、忙しい業務の合間を縫い、まとめ上げ、嶋田Vetが発表しました。 相変わらず現場では、日常的に持続感染牛(PI牛)に遭遇、そして、摘発が繰り返されています。導入元で対策が行われない限り、これからも続いていくでしょう。しかし、ある程度の傾向を把握し、尚且つ、ワクチネーションによるPI牛発生抑制が導き出されたわけですから、今回の発表は意義深いと思われます。 今回の発表の抄録とパワーポイントを載せておきます。
大型繁殖肥育農場におけるBVDV持続感染牛の摘発と清浄化対策(第2報)
○嶋田浩紀1)、足立 全1)、土江將文1)、岸本昌也1)、加藤大介1)、石倉洋司2)
発表者所属:1)(有)益田大動物診療所 2)島根県家畜病性鑑定室
1.はじめに:我々は、平成18年度中国地区獣医学会において大型繁殖肥育一貫農場における、PI牛の摘発、場内における浸潤状況を調査し、その概要を報告した。その後、更にPI牛の摘発を続け、PI牛における疫学調査を実施し、その疫学調査に基づくPI牛の摘発を行なった。また、一酪農牧場においてワクチネーションによるPI発生防止対策を実施し効果を得たので、その概要を報告する。
2.材料および方法:①平成17年4月~平成22年6月まで、本診療所が摘発したPI牛24頭について、母牛の生産地、産歴等の疫学調査を行なった。②(1)A牧場の下痢、発熱多発牛群20頭において①の調査結果に基づき、PI牛の疑いがある牛7頭を選抜し、血清を用いRT-PCR法にてPI牛の摘発を行なった。(2)B牧場の下痢、発熱多発牛群200頭において、(1)と同様に、PI牛の疑いがある牛18頭を選抜し、PI牛の摘発を行なった。③A牧場におけるPI牛発生防止対策として育成牛、経産牛に妊娠鑑定時に不活化ワクチン接種によるワクチネーションを実施した。
3.成 績:①PI牛の疫学調査成績。摘発したPI牛24頭のうち16頭(66.6%)は、母牛が北海道産であった。また、PI牛のうち21頭(87.5%)は、初産の子牛であった。②(1)A牧場において、疫学調査に基づき7頭を選抜し、2頭のPI牛を摘発した。(2)B牧場において、疫学調査に基づき18頭を選抜し、1頭のPI牛を摘発した。PI牛を牛群から処理したところ発熱、下痢は速やかに消失した。③A牧場では、導入初妊牛8頭からPI牛を摘発した。しかしながら自家育成及び経産牛から生まれた産子1,300頭(H18.6月~H22.6月)には、PI牛の摘発は1頭もいない。
4.考 察:母牛の生産地及び産歴からPI牛の疑いがある牛を選抜し、検査を実施することで、より効率的にPI牛を摘発、淘汰することが可能と考えられる。また、PI牛発生防止対策として妊娠鑑定時の不活化ワクチン接種により、PI牛の発生が防止できると考えられる。
大型繁殖肥育農場におけるBVDV持続感染牛の摘発と清浄化対策(第2報)