生後1日齢の雄のF1子牛が初乳は飲んだものの、以後の哺乳を嫌い、元気がないため、場長が 「胎便でもつまっているのかなぁ~」 と浣腸をしようと肛門付近を見てみると、 「えっ!。ない~っ!?。」 そうです、肛門がありません。多少の窪みが確認でき、肛門の痕跡が伺えますが、それだけで、穴がありません。当然、直腸と通じてないので、排糞はありません。
放って置いたら、数日後確実に死にます。 助けるには手術しかありません。 早速準備をして処置に取り掛かります。 しかし、肛門の痕跡から切開して、やみくもにアプローチは出来ません。腹腔内に存在すると思われる直腸がどの程度の物なのか、又、その直腸も生殖器や泌尿器に先天的に癒着していることが多く、その確認も必要です。そのため腹腔からのアプローチも必要です。 子牛を仰臥させ、下腹部の正中を切開します。 何せ、1日齢なのでタフな手術に耐えられるかどうか心配です。 素早い施術で開腹していきます。 程なく、直腸が確認ができ、その盲端(本来、肛門に通じていなければならないが、閉鎖している部分)も確認できます。 しかし、肛門を設置したい皮下から、5cm離れており少し距離があります。しかも、尿生殖器との瘻管とおぼしきものと強く癒着しています。癒着を慎重に剥がしていきます。 次に、外表皮膚の肛門を設置したい場所を切開していきます。 腹腔内の直腸の盲端をその部分に持っていき、盲端を切開し、腸内腔を確保します。その切開端を皮膚に縫い付けます。 閉腹して術式終了。 術創が糞で汚れるので絶えず感染の危険が伴いますが、子牛は翌日から哺乳し、元気にしています。