8/28、当診療所の契約農場にて、ホルスタイン種育成去勢牛(6ヶ月齢)が、T40.5、知覚鋭敏、外部刺激に対する狂騒(受傷を省みず、柵を飛び越えようとして、全力で柵にぶち当たる様)という稟告で診療依頼がありました。
結局、狂騒状態が3日間続き、角膜が白濁し昏睡に陥った為、9/5鑑定殺しました。
2例目として、9/1ホルスタイン種肥育牛(13ヶ月齢)が、T41.0、知覚鋭敏、餌の噛み出しを示し、舌麻痺による飲水困難となり、昏睡状態に陥り、9/5死亡しました。
3例目として、9/5ホルスタイン種育成牛(9ヶ月齢)が、T40.4、沈鬱で、起立不能に陥り、回復することもなく、9/11鑑定殺しました。
4例目として、9/6F1種育成牛(6ヶ月齢)が、T39.5、沈鬱で、起立不能に陥り、翌9/7自力起立可能となり、歩様蹌踉が続き、右眼が失明しましたが、現在元気食欲回復しました。
5例目として、9/10ホルスタイン種(8ヶ月齢)が、T41.0、前肢伸長、振戦、起立不能に陥り、翌9/11自力起立可能となり、歩様蹌踉が続き、斜頚という後遺症が残りましたが、現在元気食欲回復しました。
6例目として、9/12ホルスタイン種(8ヶ月齢)が、T41.0、知覚鋭敏、狂騒状態であるため、処置しましたが9/16死亡しました。
以上が発生及び経過でありますが、当初、神経症状の形態が様々であり、類症鑑別として、チアミン欠乏、リステリア症、ヘモフィルスソムナス症、鉛中毒、エンドファイト中毒等が挙げられましたが、発生の状況、臨床症状、疫病学的観点からどの疾病も決め手とならず、鑑定殺された牛の病理組織所見より、非化膿性脳炎像が認められ、その後組織よりアカバネウィルスが検出された為診断に至りました。
神経症状の発現の仕方に個体毎の違いがあり、つまり、これまでのアカバネ病の生後感染発生例では後肢麻痺が特徴的で、今回のように知覚鋭敏を伴い、狂騒状態を示す報告はなされていないと思います。
そのため、診断に至るまで時間が掛かってしまいました。
その後の発生個体もなく、流行状態は治まったものと考えられますが、疫病学的探索ならびに研究を行い、防除できるものなのか検討していきたいと思います。
アカバネ病の生後感染の症例が確認されました。
2011.09.26|カテゴリー:診療日誌