H23年学会ボツネタ投稿スペシャルVol.1。RSV感染症対策。

 去る、10/16広島市内のホテルグランヴィア広島において、中国学会が開催され我が診療所も参加しました。
 発表演目は「尿閉における陰茎温存手術の試み
」で、過去のブログでも紹介しましたが、尿道結石による尿閉の際、結石を直接取り除く術式とその有用性を紹介しました。
 実は、今年の学会発表は他にも2題あり、計3題発表しました。
しかし、島根県学会発表の時点で2題は中国学会への選考は漏れ、その後の発表の機会はなくなりました。
 今回はその内の
「大型繁殖牧場におけるRSVワクチンプログラムの検討」
の抄録、スライド原稿を掲載します。
 実は、繁殖牧場である松永牧場分場では晩秋から冬期にかけて、毎シーズンRSウィルス感染症の集団発生に見舞われ、処置頭数は数百頭に及び、感染症コントロールは必須課題でありました。外部導入のない、普段はクリーンな子牛生産農場である松永牧場分場は、ひとたびウィルスの侵入を許すと大流行しました。だから、寒い時季はいつ流行するのか気の重い季節でした。月齢別のRS抗体価の推移を調べたところ、150日齢以降の牛で抗体の漸減がみられ、RSV感染症の際、抗体価の低いそれらの牛群がウィルスの増幅個体となり、大量のウィルスを排出し大流行の発生のメカニズムとなっていました。
 そこで、牧場オーナーの理解を得て、それまで子牛に対する呼吸器5種混合生ワクチンの2回接種であったものを、それに加えて不活化ワクチンを2回接種することにしました。(接種時期については原稿を参照のこと)
 このワクチンプログラムの変更により、改善前に抗体価が減少傾向であった牛群が、漸増となり、以後集団発生はなくなりました。当然、ワクチンに掛かる費用は増加しましたが、感染症流行に対する薬品代、労力はなくなり、採食量の減少もなく、生産性への影響もなくなりました。
 国内の肉牛の1戸当たりの飼養頭数は増加傾向にあり、集団発生が予想される感染症に対しては、牧場に合ったワクチンプログラムが不可欠となりました。全国のメガファームが今日も、呼吸器感染症と戦っていると思います。それを駆逐するヒントになればと思い、載せました。
 評者、選者のニーズに応えられず、選に洩れ、葬られてしまいましたが、誰かに生かして頂き、生産性に寄与出来れば、大変嬉しく思います。
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