H27年度島根県獣医学会にて
演題「潜在精巣摘出におけるhCG負荷試験の意義」を発表してきました。
以下、抄録とスライドを掲載します。
潜在精巣摘出におけるhCG負荷試験の意義
○嶋田浩紀、原知也、長崎雄太、足立全、岸本昌也、加藤大介
発表者所属: (株)益田大動物診療所
1.はじめに:牛の潜在精巣では、開腹手術による腹腔内精巣の摘出が行われている。今回、潜在精巣牛にて、hCG負荷試験を行い、潜在精巣の内分泌機能や存在を評価し、精巣摘出した症例について、その概要を報告する。
2.材料・方法:hCG負荷試験は、採血後、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)3000IUを筋肉内注射し(Day.0)、Day.5、7に再度採血し、血中テストステロン(T)値を測定した。初めに、4カ月齢の去勢牛及び未去勢牛、それぞれ3頭を用い、hCG負荷試験を行い、精巣の存在とT産生能を調査した。次に、潜在精巣牛①~④に対し、hCG負荷試験及び摘出手術を行った。症例①:ホルスタイン種、6カ月齢、潜在精巣を認めた為、hCG負荷試験を行った。その後、陰嚢内精巣去勢後、及び潜在精巣摘出後にて、同様にhCG負荷試験を行った。症例②:黒毛和種、6カ月齢。症例③:交雑種、8ヵ月齢。症例④:黒毛和種、7カ月齢。症例②~④では、開腹手術を行うも、初回手術では、潜在精巣を確認できず閉腹する。それらについて、精巣の存在を確認する目的でhCG負荷試験を行った。
3.結果: 去勢牛及び未去勢牛におけるhCG負荷試験では、去勢牛ではT値の上昇は認めず、未去勢牛においてhCGに反応したT値の上昇を認めた。症例①:陰嚢内精巣去勢後、及び腹腔内精巣摘出後においてT値の上昇は認めなかった。症例②~④は、初回手術後、hCG負荷試験により、T値の上昇を認めたため、精巣は存在するものと診断し、再手術を行った。症例②:再手術時、鼠径部皮下にて精巣を確認した為、摘出を行った。症例③:再手術時、鼠径部皮下にて小豆大の精巣様物を認めた為、摘出し、組織検査及び再度のhCG負荷試験を行った。組織検査では、精巣の特徴的な所見は認められないものの、肉眼所見と術後hCG負荷試験によるT値の上昇を認めない事より、摘出物を精巣と診断した。症例④:再手術時、腹腔内より小豆大の精巣様物を摘出し、組織検査を行うも精巣と確定できず、hCG負荷試験によりT値の上昇を認めない事より、摘出物を精巣と診断した。
4.考察:潜在精巣では、精巣の萎縮、形態異常、組織変性等を認める事があり、摘出物の肉眼所見のみでは、精巣と確定できない場合がある。そのような症例では、hCG負荷試験を用い、術前、術後のT産生能を評価する事は有用な方法であると考えられる。