飼料設計による肉用牛の尿石症予防効果

平成23年度島根県獣医学会発表演題

 

飼料設計による肉用牛の尿石症予防効果

○嶋田浩紀、小山典子、足立全、土江將文、岸本昌也、加藤大介

発表者所属:(有)益田大動物診療所

1.はじめに:尿石症は肥育牛における生産病の一つで、経済的損失が大きい。今回、大型肥育農場において、育成期、肥育期に尿石症が多発していた。発症牛の多くは自家育成牛であったため、育成期の飼料設計に問題があると考え、育成期の給与飼料を変更した。その結果、尿石症の予防効果が得られたのでその概要を報告する。

2.材料および方法:平成21年11月に育成期の飼料を変更し、変更後飼料のみを給与した牛群を新飼料区、変更前飼料のみを給与した牛群を対照区と設定した。①飼料変更内容:飼料中Ca含量に着目し、新飼料区ではCa含量を低下させた。新飼料区の給与飼料は乾物中Ca濃度を0.69%(Ca:P比1.1:1)とし、対照区では1.01%(Ca:P比1.4:1)とした。飼料中のCa濃度の変更は、炭酸カルシウム(CaCO3)の添加量で調整し、新飼料区では乾物中1.0%であり、対照区では1.7%とした。その他の飼料成分やDCAD(Dietary Cation-Anion Difference)についても比較したが有意な変更は行っていない。②調査方法:調査期間を平成20年3月から23年6月とし、平成20年3月から21年10月までの20ヵ月間における、対照区牛群の尿石症診療頭数、診療回数、診療費、手術件数についてまとめた。新飼料区も同様に、平成21年11月から平成23年6月までの20ヵ月間について調査した。両区を比較し、飼料変更の効果を検討した。③血液検査:新飼料区の3~17ヵ月齢の牛、計25頭の血中Ca,P濃度を測定した。

3.成  績:新飼料区では、対照区に比べ、診療回数が30%減少、診療費は66%減少した。手術件数は対照区の18件に対し、新飼料区では2件となり、約90%減少した。また、新飼料区における血中Ca,P濃度は全頭基準値内であった。

4.考  察:尿石症の予防効果として、炭酸カルシウムの添加量の減少が考えられる。炭酸カルシウムは、バッファーとして、尿pHを上昇させる。炭酸カルシウム添加量の減少による尿pHの低下は、尿石症発生減少の一因といえる。さらに、飼料中Ca濃度の減少により、尿中無機成分総量の減少、尿中無機成分飽和度の低下を招き、これにより無機成分の結晶形成を減少させ、尿石症発生を低減させたと考えられる。

 

飼料設計による肉用牛の尿石症予防効果

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