BVDV持続感染牛が牛群に及ぼす影響

 畜産の規模拡大や省力化のため、自動哺育装置や集団飼養による哺育、育成が行われています。

そのような、飼養形態においては、呼吸器疾患等が多発する傾向にあります。

牛の呼吸器疾患は、死亡頭数も多く、牧場に与える経済的損失は大きなものとなっています。

 

 

 昨年より、東北地方のA農場より、呼吸器疾患についての相談を受け対策を行いました。

A農場では、交雑種をスモール市場より導入しており、約10%の牛が哺育、育成期に呼吸器疾患等で死亡している状況でした。

呼吸器疾患による死亡が多い事から、牛群内には呼吸器疾患による発育遅延や慢性肺炎等の個体も多数いる事が想像されます。

 

 

まず、30日齢~300日齢までの牛50頭より採血行い、牛群のウイルス抗体価(RS、IBR、PI3、BVDV1、BVDV2、AD7)を測定しました。

抗体検査により、牧場内における呼吸器ウイルスの動態、様々な導入先からの移行抗体レベルの把握、

現行のワクチネーションの評価を行いました。

その結果、各種ウイルスにおいて、著しく高い抗体価がみられ、これらは感染抗体と考えれました。

複数のウイルスが呼吸器疾患へ関与し、集団発生が起きているものと考えられました。

 

また、BVDV持続感染牛(PI 牛)の摘発を行い2頭のPI牛が摘発淘汰されました。

 そこでPI牛がいた哺育ステーションについて、平均治療回数、死亡頭数を調査しました。

対照区をPI牛導入の前後の導入牛群としました。

結果を以下に示します。

 

 

 PI牛がいた哺育ステーションでは、死亡頭数、平均治療回数が多いことが分かります。

PI牛がいる事で、同居牛は常に多量のBVDVに暴露され、免疫力が低下した状態にあったと考えられます。

この調査からも、PI牛の摘発がいかに重要であるかがわかります。

A農場では以後、導入牛に関してPI牛摘発のための検査を続けており、導入時検査によりPI牛が摘発されています。

現在はPI牛の早期摘発により、このようなPI牛による牛群の損耗は抑えられていると考えられます。

 

今後、ワクチネーション、疾病予防、治療プログラム等の変更により、状況が改善されると思われます。

 

 

 

 

 

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